実践する会 マンスリーレポート

第425回例会

分水嶺下、今後の医療介護経営の方向性

……ビッグデータの解析とその活用方法

発題者:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医歯学専攻

環境社会医歯学講座医療政策情報学分野 教授

伏見 清秀

これからの福祉と医療を実践する会 マンスリーレポート(仮称)20179(試作第8)

「分水嶺下、今後の医療介護経営の方向性……ビッグデータの解析とその活用方法」受講レポート

このレポートは、例会欠席の皆様に例会の模様をお伝えするために発信されるもので、毎月の発信を目指して試行を続けています。報告内容について発題者の了承は得ておりません。

例会での受講者の熱意は十分には伝えきれませんので、次回はどうぞご一緒に参加ください。

皆様の活用の便宜のために、あえてシンプルなワード形式でお届けいたします。

*ご意見などは、伊藤事務局長までお届けください。*

 

1.研究会のあらまし

演 題  「分水嶺下、今後の医療介護経営の方向性

……ビッグデータの解析とその活用方法

発題者  東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医歯学専攻

環境社会医歯学講座医療政策情報学分野 教授

伏見 清秀

進行係  天野社中 代表  天野 武城当会理事

日 時  2017年22日(金) 14:00〜16:30

会 場  東京都新宿区 戸山サンライズ

 

2.発題のあらましと報告者が注目した項目

【当日の発題の内容】

1.   DPC制度の平成30年度改定と今後

Ø  CCPマトリクス、病院指標の今後

Ø  DPC病院に求められる医療の質と人材育成

2.   地域医療構想への対応

Ø  病床機能報告と病床機能分化のあり方

Ø  地域医療構想の実態と今後

 

 

1.   DPC制度の平成30年度改定と今後

1)   CCPマトリクス、病院指標の今後

 

u  平成30年度DPC改定の方向性

Ø  病院群、基礎係数、暫定調整係数

²  医療機関群の選択制は見送り

²  暫定調整係数は廃止

²  激変緩和措置は2%、1年間とする

²  「プラス緩和」は今後検討

Ø  機能評価係数U

²  機能評価係数UはT、U群のみ重み付け

²  後発医薬品係数は廃止

²  重症度係数は廃止

²  DPCデータ評価は厳格化

²  病院情報の公表は微修正

²  指導医療官派遣の評価は廃止

²  精神科診療は地域医療係数で評価

H29/8/4DPC評価分科会まで) 

Ø  (報告者追記)発題者は後発医薬品を使用するのが当たり前なので、

「後発医薬品係数は廃止」。データの精度が良くないと

正しい評価が出来ないため「DPCデータ評価は厳格化」と語った。

 

u  重症度を考慮した評価手法(CCPマトリックス)

²  平成30年度の調整係数廃止に向け、より正確に医療資源必要量を診療報酬支払いに反映させることが必要。

²  例えば、病院毎の肺炎患者の病態・重症度の違いをDPC分類では十分適切に評価されていない可能性。

²  DPC分類の更なる精緻化が必要だが、分類数は増やせない。

²  「重症度を考慮した評価手法」

l  CCP(Comorbidity ComplicationProcedure)マトリックスの設計手法を検討

 

u  CCPマトリックスの考え方

²  手術処置と副傷病等の組み合わせに基づく医療資源必要度分類である。

²  枝分かれの構造にとらわれずに医療資源必要度が類似したグループをまとめることができる。

²  (報告者追記)マトリクスなので多次元に集約して、区分を圧縮して分類数を減らすことが可能

 

u  CCPマトリックスの導入

²  平成28年度から、脳梗塞、肺炎、糖尿病に試行的に導入

²  DPC点数表の見かけ上は、分類数が大幅に増加

l  CCPマトリックスに適した表示方法が導入されなかったため

l  多くの分類で日数と点数が全く同一になっている

²  CCPマトリックスに適した表現方法を検討する必要

²  (報告者追記)「CCPマトリックス」は、伏見教授を中心に制度設計に向け研究が進められてきた包括支払い方式の中で、「患者の重症度」を評価する手法DPCではある傷病に対してどのような治療をしたか、どのような副傷病があるのか、などに応じてコードが定められており、1つの傷病に対していくつもの枝が伸びており、ツリー図などと称される。またDPCでは、入院基本料や検査・薬剤などを包括評価した点数が設定されていて、「患者の重症度を十分に評価しきれていないのではないか」との指摘がある。DPCでは、従前の「調整係数」が患者の重症度を評価する一定の役割を果たしたが、次期改定では廃止の方向で別の「重症度評価手法」が待望された。前回の診療報酬改定時から、DPC制度にCCPマトリックスが試行導入された。

 

 

2)   DPC病院に求められる医療の質と人材育成

 

u  医療安全管理からクオリティ・マネジメントへ

²  (報告者追記)発題者は、厚労省は「医療安全管理」と「クオリティ・マネジメント」の区別が解っていないと言う。日本では「医療安全管理」は現場に浸透してきたが、「質の管理」はあまり進んでいないとの見解を示した。

 

u  【医療安全管理】

Ø  IOMTo Err is Human 「人は誰でも間違える」

Ø  (報告者追記)IOM:米国医学研究所(Institute of Medicine

患者取り違え事故(1999)

消毒液注射事故(1999)

 

Patientsafetyの強化

安全管理部門設置

リスクマネージャ

インシデント・レポート

 

 

u  【クオリティ・マネジメント】

Ø  IOMCrossing the Quality Chasm

Ø  (報告者追記)2001年に公表された「Crossing the Quality Chasm」の中で,米国民が受けられるはずの医療サービスと実際に受けている医療サービスの内容の格差がchasm(断層)と表現されるほど深刻で、今後疾病構造が慢性疾患中心となるにつれchasmのさらなる拡大が危惧される。この解消には6つの改善目標「安全性,有効性,患者中心志向,適時性,効率性,公正性」を共有し,医療従事者の教育プログラム再構築も含めた医療システムの再設計が必要であると論じた。

Qualityindicators.

Hospitalrankingなどの普及

OECD2014:日本では「質に関するイニシアチブが制度レベルでほとんど組み込まれていない」

腹腔鏡死亡等多発(2015)

 

我が国の医療の質評価、クオリティ・マネジメントの欠落が露呈

 

u  医療の質確保と機能分化のための医療データの活用

 

既に、診療報酬評価に利用され、病院機能を示す重要な指標となりうる

 
1.ケースミックス分析

l  DPC等で調整した比較分析

 

2.診療プロセス分析

l 

医療の質の評価への対応が、高度急性期医療機関の要件になりうる

 

 
詳細な診療実態の可視化と比較

 

3.アウトカム分析

l  医療の質の評価の可能性

地域における各医療機関の役割を明確にし、医療計画などへの応用も

 

4.地域での役割の分析に基づく

l  病院機能分化

 

u  ケースミックス分析による病院機能評価ケースミックス分析による病院機能評価

²  効率性指標の継続的改善は急性期病院の「義務」

l  診療部門別、疾患別に具体的に対策を立てる

l  短期入院の患者を増やしても改善されないことに注意

l  後方医療連携の重要性

²  複雑性指標は病院機能を反映する重要な指標となる

l  入院患者を選ぶことはできないので、簡単には改善できない

l  専門的な手術や検査の患者を増やして改善

l  前方医療連携を強化し、自院の特徴をより明確化する

l  病床稼働率が下がり、軽症患者の入院が増えると低下する

l  患者構成の指標は地域における病院の役割を反映

²  (報告者追記)発題者は「効率性係数」は、早く治療することで比較的容易に改善可能だが、「複雑性係数」は、入院患者を選ぶことは出来ないので、改善は簡単ではないと述べた。

 

u  プロセスアウトカム分析による医療の質の評価

²  DPC、レセプトデータ等のマイクロデータの分析による詳細な診療内容の評価

²  Quality indicatorQI、臨床質指標)の活用

²  国立病院機構などで我が国でも多くのQIが開発されている

²  DPCデータなどの既存データで測定可能

²  公表されている指標を用いて他院とのベンチマークも可能

 

u  医療安全推進への医療データの活用事例

²  1.モニタリング

l  医療安全関連の臨床指標の例

l  静脈血栓塞栓症予防対策実施率

l  肺血栓塞栓症発生率

l  CVカテーテル挿入による合併症の発生率

l  75歳以上患者の入院中の骨折発症率

l  経皮的心筋焼灼術に伴う心タンポナーデ発生率

²  2.インシデントレポート検証

l  入院中の転倒・転落に伴う骨折のレポート提出率等

²  3.インフォームド・コンセントへの活用

l  輸血率、合併症発生率、死亡率等

 

u  クオリティ・マネージャー養成プログラムの概要

²  PDCA医療クオリティ・マネージャーに求められる能力

l  @医療の質評価に必要な医療データ分析能力

l  A継続的に診療内容の改善を図るPDCAプログラム実行能力

l  B有機的な組織連携を構築するリーダーシップ

²  養成プログラムの構成

l  〈1〉データ分析方法論の講義・演習

l  〈2〉医療実データを用いたPDCA実践プログラム

l  〈3〉大学院修士課程医療管理政策学講義で体系的な知識を習得

l  4〉ワークショップ

²  (報告者追記)【同プログラムのミッション〔抄〕】我が国の高度急性期病院における医療の質と安全の評価と確保及び病院機能の高度化に相応した病院組織マネジメントを担う人材の養成を目指す。病院機能の更なる高度化及び機能的な組織間連携の増強につなげて、病院組織マネジメント改革を実現するリーダーシップを発揮できる人材の養成を目指す。

http://www.tmd.ac.jp/koudoiryou_med/gaiyou/index.html

 

 

2.   地域医療構想への対応

1)   病床機能報告と病床機能分化のあり方

 

u  人口構造の高齢化と人口減少が与える急性期医療への影響

²  「人口構造にかかわる変化ほど明白なものはない。」(P.F.Drucker)

 

u  医療機能と医療需要推計の考え方

²  医療需要推計には、@時間軸、A医療資源必要度に注目する2つの手法がある。

²  (報告者追記)急性期・亜急性期・回復期・慢性期を時間軸で分類するのではなく、医療資源必要度に応じて分類する必要がある。

 

u  2025年改革シナリオの修正

高度急性期病床

DPC?

55万床

 
15万床←平均在院日数12日、稼働率80%

(元推計値22万床←15-6日、70%)

一般急性期病床

40万床←平均在院日数9日、稼働率80%

角丸四角形: 一部は「軽度急性期」、
「地域一般病床」?へ
(元推計値46万床←9日、70%)

亜急性期病床

80万床

 
52万床←平均在院日数120日、稼働率90%

(元推計値35万床←60日、90%)

療養病床

28万床

 

急性期病床は推計ほど必要では無いDPC病床は40-50万床程度では。現在のDPC病床の一部は亜急性期病床へ

☆一方、亜急性期病床は明らかに推計以上に必要となる。

²  (報告者追記)上記のように発題者は、急性期病床は推計ほど必要ではなく、逆に亜急性期は推計以上に必要で改革シナリオの修正が必要と述べた。

 

u  社会保障改革の枠組み

² 

社会保障制度改革関連法案

医療計画と地域医療構想

地域包括ケアシステム

 
社会保障国民会議

l  データに基づく政策の推進

l  地域医療ビジョン策定

²  経済財政諮問会議

l  データ分析による支出目標設定

 


テキスト ボックス: ICTによる医療介護情報の活用
地域医療構想の策定
NDBデータ・病床機能報告・DPCデータ・官庁統計等

²  内閣府社会保障制度改革推進本部

²  医療・介護情報の活用による

改革の推進に関する専門調査会(H26.7.1)

²  医療・介護情報の分析・検討ワーキンググループ

 

u  地域医療構想策定・運用の流れ

²  1.需要推計

l  医療ビッグデータを活用して、医療機能別の標準的な病床数(医療需要)を国、都道府県、二次医療圏(構想区域)別に推計

²  2.供給実態評価

l  病床機能報告制度のデータを集計し、実際の医療供給量を明かとして、必要量との差異「需給ギャップ」を可視化

²  3.調整会議

l  「協議の場」において、地域医療データブック等の様々なデータを分析し、供給ギャップの解消を進める

 

u  患者調査データによる地域医療分析

二次医療圏単位の地域全般の医療実態の把握

急性期以外の状況も見える

保険診療外(正常分娩、事故)なども見える

Ø  2011年データが最新

Ø  都道府県のみが個票データを取得することができる

Ø  粒度はやや粗い

 

u  NDBデータによる地域医療分析

全医療機関の状況の把握

急性期以外の状況も見える

詳細な診療行為明細もわかる

 

NDBデータによるSCRの比較

SCR:人口構造標準化診療行為算定率)

 

地域の医療提供状況の特徴を把握できる

 

u  医療需要推計から機能分化へ

²  1日あたり診療報酬点数から機能別需要を推計する方法は、非常に簡略化されたものであり、点数区分基準から機能別医療需要を計算する関数にすぎない

²  妥当な点数区分基準を設定できれば、地域レベルの医療推計には充分

²  この簡便な方法のみで、個別病院の病床ごとに医療機能を評価ことは不可能

²  レセプトデータと病床機能報告等の情報の詳細な分析によって病床機能を評価していく方法の開発が必要

 

u  地域医療構想策定プロセス(ガイドラインより)


²  体制整備(調整会議等)

²  地域医療データ分析

²  構想区域設定

²  医療需要推計

 

 

²  受療動態を加味した医療供給の推計

²  必要病床数の推計

²  病床機能報告データと比較

²  平成37年のあるべき医療提供体制に向けた施策立案


 

2)   地域医療構想の実態と今後

 

u  「地域医療構想」の実態評価

²  平成28922日時点でホームページ等から地域医療構想(案を含む)を確認できた28都府県を分析

²  全地域で国の指針に沿って「必要病床数」の推計あり

²  病床機能報告データの取り扱いで顕著な差異を認める

l  11地域で必要病床数と病床機能報告集計数との対比なし

l  東京都等では両データの比較が困難となるように提示

²  具体的な機能分化の方向性を明確に確認できたのは4地域のみ

²  青森県などでは、さらに踏み込んで、自治体病院等の再編の必要性等も明示

将来の需給ギャップを埋めるための具体的な施策が示されない構想が過半数

地域病院は、地域医療構想に頼らず、自ら地域医療の実態を分析、対応する必要

 

u  病院機能のパラダイム・シフトの必要性

²  地域医療提供体制に対する関係者の意識を、急性期に偏重した病院階級モデルから、地域の医療需要に応じたネットワーク型モデルに変革することで、各プレーヤーがそれぞれの役割を明確に認識する必要があるのではないか。

u  【まとめ】

²  1. DPC制度は安定化し、今後は医療提供体制との整合性と、医療の質の確保が課題となっていくと予想される。

²  2.医療データ分析は飛躍的に進展し、診療と経営の質の確保に重要な役割を果たしている。これらを担う人材育成が急務となる。

²  3.地域医療の変革期において、各医療機関は、医療データ活用によって地域での自らの役割と機能連携の方向性を客観的に見定めることが求められている。

²  4.医療ビッグデータを用いた医療需要推計が示されたが、それに対応する地域医療構想はさらなる整備が必要。

 

3.会場からの質問

Q)地域医療構想の「調整会議」はうまく機能しているのか?

⇒(A)あまりうまくいっていないと感じる。今までの医療計画と大差のないものになるのではないか。「調整会議」は、地域というよりも自分たちの医療機関がどうなるかに趣が置かれている。

Q)実際に地域で1回目の「調整会議」に出席したが、ステークホルダーが多く本当に同じデータを基に話し合いをしているのかという感じで、まとまりがなかった。今後は県のお墨付きの場になってしまうのではないかと危惧する。どう進めていけばいいかアドバイスをいただきたい。

⇒(A)非常に大事な視点だと思う。会議に中身の議論がなく、実際のところ推計値から今後の医療提供体制を予測し、お茶を濁す程度ではなかろうか。それにより困るのは地域の住民で、医療機関にとっては実行性のないものの方がむしろ都合がいい。財務省は病床規制の道具に使いたいのであろうが、強制力により実行する仕組みは出来ていない。たとえば、手術を多くやってきた医療機関であっても、今後は脳卒中や肺炎の患者が増えるというように、患者層は変化していくので、医療機関自らが自分たちで考えて個別に動くしかないのだろうと思う。そのための検討に必要なデータの公開を、県に求めていくといったことはありだと思う。

 

4.情報交換会の様子

この日主役の伏見先生を中心に情報交換会を進める予定であったが、残念ながらご都合で欠席された。

今回の情報交換会出席者の中にはDPC算定病院に所属する人は(たぶん)いなかった。それでも、ビッグデータを用いての分析を通し今後の自院の立ち位置をどこに据えるか?地域医療構想にどう対応するか?というテーマへの関心は高いようであった。例により発題の延長線上で、活発な議論が繰り広げられた。

【情報交換会に参加しませんか】

毎回例会の後に、場所を移しお酒も入り気分も新たに、発題者を輪の中心にして、ざっくばらんに話を展開しています。発題会場では質問しにくかった内容でも、ここならば大丈夫です。日ごろ実践してきたことを仲間に伝えていただくことも、大歓迎です。もし初めてで、「おもしろそうだけれども敷居が高いな」と感じられましたらエスコートします。当会のスタッフにお気楽に声をかけてください。新しい仲間との出会いを、心待ちにしております。

 

5.報告者の感想

★上記のまとめに記されたように、「医療データ分析は飛躍的に進歩」したが、今後、各医療機関が、その医療データを診療や経営の質の確保にいかに活用できるか?が課題で、それを担う人材育成が急務だと発題者は述べられた。突き詰めれば「人」ということになるのだが、その中でもキーを握るのは事務職ということか?

★「地域医療構想はさらなる整備が必要」と伏見先生はおしゃっていたが、同構想は「机上の空論で、このままでは実際には動かないのではないか」と危惧する声も聞こえてくる。高度急性期から急性期、回復期、慢性期、在宅へとうまく連携が出来ていた地域でさえも、地域の中で急性期医療を担うべき公的病院が、今後の患者層の変化を予測し病院の利害から回復期にも触手を伸ばそうとする事例もあり、「調整」は難しいようだ。

主役は地域の住民であるという原点に立ち返り、長足の進歩を遂げた医療データ分析を活用し、「それぞれの地域で今後どのような医療を展開するべきなのか」を構想する必要があるのではないかと感じる。

 

        (報告者・外山和也)

 

 

 

 

 

実践する会 マンスリーレポート

特別研修会vol.61

医事課として経営支援に貢献し働き甲斐も手に入れよう

発題者:和久井 敏夫 氏  天野 武城

 

これからの福祉と医療を実践する会 マンスリーレポート(仮称)

20179月特別研修会(試作第7)

医事課として経営支援に貢献し働き甲斐も手に入れよう!」受講レポート

このレポートは、例会欠席の皆様に例会の模様をお伝えするために発信されるもので、毎月の発信を目指して試行を続けています。報告内容について発題者の了承は得ておりません。

例会での受講者の熱意は十分には伝えきれませんので、次回はどうぞご一緒に参加ください。

皆様の活用の便宜のために、あえてシンプルなワード形式でお届けいたします。

*ご意見などは、伊藤事務局長までお届けください。*

 

 

1.研究会のあらまし

 

演 題  「【医事課特研】

医事課として経営支援に貢献し働き甲斐も手に入れよう!」

 

発題者  和久井 敏夫(当会運営委員 第1課・第2課を担当)

天野 武城  (当会副理事長 第3課を担当、運営を兼務)

 

日 時  2017915日(金) 10001630

 

     追加の情報交換会      1630

 

会 場  東京都新宿区 戸山サンライズ

 

 

2.発題のあらましと報告者が注目した項目

 

1)全体の構成は次のようだった。

第1課      仲間の汗を無駄にするまい・レセプト請求の精度を上げる(発題と質疑応答)   

第2課      宝の持ち腐れは致しません(発題と質疑応答)

第3課      チーム医療の要!医事課業務(発題と質疑応答)

グループワーク

グループ別発表

総括質疑応答、意見交換

追加の情報交換会

 

2)第1課のあらまし

「仲間の汗を無駄にするまい」を、次のテーマに具体化させて発題した。      

★レセプト請求の精度を上げる

ここでは「基本は国保連合会・社会保険支払基金からの増減点連絡票をよく研究すること」。

*       減点・査定されたレセプトを再発行し、減点査定の事由から原因を突き止める」ことが重要

Ø  医事課の請求方法そのものに問題があったのか?(医学的に適応と認められない。告知・算定要件に合致していない)

Ø  医局を巻き込んで改善する必要がある内容なのか?(医学的に過剰・重複)

 

*       再審査請求は、まめに実施した方が良い

Ø  何故か?やらない医業機関は甘く見られてしまう。何十円単位でも再請求を実施する公的医療機関もある。

 

*       「増減点連絡票」の内容は院内で共有すべし

Ø  最低限、医局・看護部とは情報共有を。医事課では気が付かなかった点を看護師が指摘してくれることもある。

 

*       レセプトの勘所

Ø  点数の高いものには必ず何かしらの縛りがある。⇒ここをしっかりチェックしておく。

 

*       レセプト請求の精度を高める HOW TO

Ø  逆説的だが、査定されたものを見ておくべきだと発題者は言う。⇒「間違って算定し査定・減点を受けたレセプトばかりをよく見ておくと、間違った算定の仕方を覚えていることにより、正しい算定が出来るようになる。」「正しいことから覚えていくことも大切だが誤りから覚えていくことも1つの方法。」

 

★職員の資格などの施設基準を確保する

s-20170915_105402ここでは、職員の資格など施設基準に関連する情報を医事課が確実に収集することが重要となる。

それをもとに具体的に病院の経営の方向性を、さらに将来をも見据えて、必要と思われる病院の将来像から問題意識をもって施設基準の情報を把握することが望まれる。

 

 

 

 

 

*       何をやったら点数を「適正に」かつ「積極的に」とれるかの検討を

Ø  本日のテーマである「仲間の汗を無駄しない」ために、「適正に」「積極的に」点数をとるための検討をすべき。

Ø  医師・看護師・薬剤師にかかる資格の種類・人数は、人事・総務または看護部長が必ず把握しておくことも必要。

 

医療職員にレセプトの仕組みを啓蒙する

医療スタッフが診療報酬を正しく理解し、漏れをなくしレセプトに結び付けるように努める。

*       現場は治すこと、ケアすることが第一で、記録することは二の次・三の次になりがち

Ø  医師・看護師が診療行為をカルテに記入しなければ、保険請求出来ない。⇒日々の医療行為がカルテに記載されて情報となって医事課に伝わることで、レセプトとなって請求され病院の収益となることを啓蒙しなくてはいけない。

 

増収と経営安定・理念実現の関係を理解する

増収・経営安定があってこそ、地域医療を守り共に社会に貢献することで、理念現実が生まれる。

*       医事課職員は視野を広げるべき

Ø  医事課職員はとかく、増収・経営安定の視点から売上や諸々の数字を追っかけがちになり、患者の気持ちが二の次・三の次になりがち。

 

3)第2課のあらまし

「宝の持ち腐れはいたしません」を、次のテーマに具体化させて発題した。

医事課の持っているデータのあらまし

*       医事課のデータを経営戦略情報として活用しよう

Ø  医療行為からそれに関わるもの、人(DR)・診療科・患者(人数・年齢・地域)、全て入力したものは、経営戦略情報の基となる。

 

医事課データの経営への活用

*       医事課のデータを上手に経営情報として活用しよう

Ø  医事課は各部門別の診療報酬を把握して毎月発表することにより、より詳しく病院の経営状況が分かる。またデータを経営に活用することも大切。そうすることによって、「職員が経営に対して参画意識が持ち帰属意識も芽生える。」

 

データを中心とする改善策の討議

データは医療行為の結果にしかすぎない。結果に至るまでの過程を掘り下げて精査・注視することが必要

 

「この様にすれば必ずどの医療機関でも解決します」……という処方箋はない。

悩んでいる問題に対してその職場全員に問題を投げかけし、皆で悩んで問題を共有することも1つの策

 

 

4)第3課のあらまし

発題の天野氏は、本論に入る前に「皆さんに質問です」と、いきなり切り出した。

 「医療とはサービス業ですか?」「医事課職員は何をする人ですか?」などの質問は、簡単なようで難しい質問で、受講者に若干の動揺が見られた。どうやら、【自分で考えて、発言しながら、この研修に取り組もう】というメッセージのようだ。この質問は、さらに、「患者さんと会話をしていますか」「そこで得た情報はどのように使っていますか」と続いた。

【報告者補足】そうか、この質問は【医事課が得た情報を院内に伝達・活用しているか】との問い合わせであり、

2課の「宝の持ち腐れはいたしません」を、大上段に振りかぶるだけではなく、具体的な毎日の仕事の中で

実行しているかを問うているのかもしれないと感じさせる質問であった。

  

その後に「チーム医療の要!医事課業務」を、次のテーマに具体化させて発題した。

1.    組織上における医事課の位置づけ

ここでははじめに、施設の中での医事課の役割を確認した。

Ø  自施設の理念

Ø  自施設の組織図上の位置づけ

Ø  診療情報管理部門?

Ø  事務管理部門?診療部門?

Ø  関連組織との関係・連携

 

2.    医事課業務

次は医事課の業務の解説であったが、ここでは「脱!レセプト業務」として、レセプト業務だけの医事課からの脱却や病院全体への貢献の具体的な進め方を解説した。

Ø  医事課の基本方針

Ø  医事課の職務分掌

Ø  各種医事統計の取りまとめと報告

Ø  窓口の収納業務

Ø  レセプトの作成・点検、返戻・査定への対応

Ø  施設基準の取得及び順守するための体制(欠格条項の提示)

Ø  未収金の管理とその対応

Ø  医事業務の人材育成

Ø  患者及び職員満足度調査への主体・協力

 

3.    チーム医療における医事課業務ファシリテーター役

ここでは、いよいよ、「院内のすべての部署に関連するファシリテーターとしての働きを次の項目によって解説した。

Ø  診療部門

Ø  薬剤部門

Ø  看護部門

Ø  手術部門

Ø  リハビリテーション部門

Ø  臨床検査部門

Ø  画像診断・放射線部門

Ø  栄養管理部門

Ø  診療情報管理部門

Ø  医師事務作業補助者

Ø  夜間業務(直営の場合)

Ø  委託業者

 

4.    その他

ここでは、業務委託について取り上げた。今回医療事務を外部委託した施設はいなかったが、それ以外の業務委託があれば、その委託先の職員も大切な戦力であり、自施設の考えを確実に伝えることが重要であることが示された。

Ø  業者委託関連

Ø  夜間・救急受付の収納方法

Ø  警備体制と緊急時対応マニュアル及び備品

 

 

 

仕事は愉しく、いつも元気で笑顔を忘れずに!

 

人が集まる十か条

 

1、人は、人が集まる所へ集まる。

 

1、人は、快適な所へ集まる。

 

1、人は、噂になっている所へ集まる。

 

1、人は、夢の見られる所へ集まる。

 

1、人は、良いものがある所へ集まる。

 

1、人は、満足の得られる所へ集まる。

 

1、人は、自分のためになる所へ集まる。

 

1、人は、感動を求めて集まる。

 

1、人は、情熱のある人を求めて集まる。

 

1、人は、人の心を求めて集まる。

【報告者補足】こ10か条は医事課業務だけには限らない、好ましい組織の具体像みたいな提案であった。

医事課が率先してこのような組織を実現できればいいな、というメッセージであった。

  

5)グループワークでの話し合い

  グループワークでは、受講者を数名のグループに編成し、その中での意見交換を行った。はじめに、

今日の研修の内容について感想発表の形で意見を交換した。この意見交換は、自分だけでは気が付かない視点を

他の受講者から示唆してもらうことが出来て、大いに理解を深めることが出来た。

次に、「医事課として経営支援に貢献し働き甲斐も手に入れよう!」を実現するためには、どのような努力・

工夫が必要なのだろう」というテーマについて、意見交換を行った。

 

 

 

6)グループワークの内容を全体へ報告

Aグループ】からの報告

医事課が調整役を果たすことに関係して、なんでも医事課に持ち込まれる傾向がある。「なんで私たちがそこまでやらなければならないのか」と思うこともあるが、それだけ医事課が役に立っているともいえる。調整役になるためには、院内他部署の仕事の内容をよく理解することが必要だろう。

 

Bグループ】からの報告

いろいろな話に広がって、あまりまとまりめいたものとならなかった。医事課とは何をやるのだろう、「なんでもや」になっている傾向があるが、これは良くもあり、悪くもあるのかもしれないなどの意見があった。

またある施設で、職員間で「ありがとうメッセージカード」を利用して、コミュニケーションを充実させている事例が報告された(この事例は、他のグループからも注目され、後程の全体会でも質疑応答がされた)

 

Cグループ】からの報告

 医事課が出来る経営支援としての役割を話し合った。そのために必要なこととして、次の3点にまとめた。第1に、患者サービスを施設の最前線として担うこと、患者に安心してもらうこと、クレームの処理と還元などで努力すること。第2に、請求事務を確実に行うために、医師への情報提供や医師との協力を進めること。第3に、コスト意識のための院内への働きかけ、である。

 

グループワークは「医事課として経営支援に貢献し働き甲斐も手に入れよう!」を実現するためには、

どのような努力・工夫が必要なのだろうというテーマについて、意見交換を行う」という計画だった。

この計画は、その通りに進んだグループもあり、脱線の繰り返しのグループもあり、という状況だった。

 グループワークの魅力は、自分の感想を発言することによって自分の考えを整理し、

他人の発言に学ぶことにある。それとともに、他の施設の状況を知ることにより明日からの改善の

ヒントをつかむことにあるので、どうしても脱線することは避けられない。

その点では、計画通りも良し、脱線も良し、というところだろう。

 

7)組織管理と調整役

 オブザーバーの鈴木理事(当会の中堅塾の塾頭)は、次のように補足発言をした。

産業革命以降企業の規模が大きくなると、各部署が誠実に仕事をするだけでは全体としての目標達成が難しくなり、各部署間の調整役が必要になった。

まさにこの努力が組織管理の課題となったが、これは医療機関でも当てはまる。

医局・看護部・薬剤部・栄養部などの各部署が自分の仕事を誠実に努めるだけではなく、組織全体の立場から相互に調整する必要があり、そのための調整役として医事課が期待されている。

グループワークの報告を聞くと、その点は十分に研修されているので、自信をもって施設に帰り、他部署の人たちと十分に話し合って、調整役として活躍してください。

 

 

.情報交換会でのあらまし

  研修終了後に、発題者を囲んで、追加の意見交換会を開催した。ここでも、医事課の問題を中心にして

多方面からの発言で、相互啓発の効果を上げた。

  ここで、和久井氏から「先ほどは話しできなかったし、もちろんレジュメにも書けないことなので、

ここだけにしてほしいのですが……」と秘密のお話があった。もちろん秘密ですから、ここにも書けません、

あしからず。(保険会社からの調査依頼の、なんとかの金額がかんとか、とかいうようなお話でしたような記憶があります)

 

 

.受講者の感想

この特別研修会の参加を決めたのは、自院を取り巻く環境の変化に合わせて、姿を変えていきたい、そのためにはどうしたらいいかを考えるためのヒントが得られるのではないかと思ったからだ。  はじめは、医事課のスタッフを送りだそうかと思ったが、常勤職員10人の少所帯の診療所、なかなか、平日に職員を外に出すのは難しい。それなら、医事課業務から離れて久しい私が初心に戻って参加し、私が得てきたことを現場に還元するのもありかなと考えた。ここで聞いた話を現場に持ち帰れば、そんなことずっとやってます、といわれることもあるだろうし、へー、そうなんですか、と業務改善に役立ててくれることもあるだろう。いずれにしても、何らかの変化を起こすことは可能であろうと考えた。

講義・グループワークの内容については、すでに充分述べられているので、ここで繰り返すことは控え、受講して感じたことを少しばかり述べたいと思う。

コミュニケーションのとり方には、二つあると思う。一つめは、伝達する、つまり、要件を伝えることを目的とした行為、二つめは、相手との関係性を作りあげる、つまり、共感し合うことを目的とする行為である。私は、今回の特別研修会の受講者は、二つのコミュニケーションの方法で構成された成果を手に入れたのではないかと思う。

第一部は、講師からの話を聞くという点で、一つめの伝達にあたるのではないだろうか。講師の話を現場に持ち帰って、みんなで共有することで、今までやってきたことを確認し、新しい風を入れることができるはずだ。

第二部のグループワークは、互いの意見を出し合うという点で、二つめの相手との関係性を作りあげる行為としてのコミュニケーションにあたるのではないだろうか。ここでは、「聞く力」が重要な要素となる。

コミュニケーションはキャッチボールに例えられる。相手の受け止めにくいボールを投げてしまえば、そこで終わってしまう。しかし、相手のとりやすいボールを投げれば、投げ合ううちに、関係性が作りあげられていく。はじめは、相手の信念や価値観をお互いにおかしいと思っていたとしても、長時間話をしていくうちに、お互いが影響を与え合い、感染し合うようになり、お互いをおかしいと思うことが難しくなってくる。つまり、多様な考え方を受け入れる素地が生まれてくる。そういう力を身につければ、多様な場面での対応が可能になってくるはずだ。

 今は、インターネットで、どこにいても情報は手にはいる。しかし、講師の話すことを直接聞くことで得られる、空気感・臨場感は、インターネットで得ることは、難しい。目の前にいる講師の話を聞く、互いの意見を交換しあいながらグループワークを行う、という環境のなかで、一日、業務から切り離された場所で立ち止まって、福祉・医療のことを考える時間は、本人にとっても、送り出した法人にとっても、貴重な時間であるに違いない。

子供の頃は、小学校にあがる、卒業するなど、周りの環境が時間の区切りを作ってくれるが、大人の場合は、そうはいかない。自分で区切りをつけて、自分で考えて、成長していかなければならない。そのためには、時には、立ち止まって考える時間が必要だ。

この特別研修会に参加した受講者は、今すぐに役立つものを持ち帰れた人もいれば、今は、ピンとこなくてもいづれどこかの機会に、あっ、あの時のことはこういうことだったんだと、わかるときがくる人もいるだろう。ここに、研修会に参加する意義、参加させる意義があるのだと思う。

この特別研修会を企画してくださった「これからの福祉と医療を実践する会」に、感謝します。

 

           医療法人社団ユークレイジア会 小山クリニック 管理部長 小山恵子

 

 

.まとめ

受講者の感想で小山氏が述べている通り、当会の研修の特徴は「講師からの話を聞くだけではなく、

グループワークで互いの意見を出し合う」ことの組み合わせにある。受講者は高い問題意識をもって

研修に参加しており、それを活かしての相互啓発が有益であるとの考えによるものだ。

そして、私たちの隣にいる仲間たちも多分高い問題意識をもって毎日頑張っていることだろう。

そのような仲間と協力して、あすからの実践活動に活かす勇気と工夫を持ち帰ることのできた

今回の研修会であったといえるだろう。

 

以上 

        

(報告者:鈴木喜六・外山和也)

 

 

 

実践する会 マンスリーレポート

第424回例会

環境激変時の対応を組織としていかに進めるか?

……実践事例からの知見と指針

発題者:社会福祉法人恩賜財団済生会支部神奈川県済生会 支部長兼常務理事

正木 義博

これからの福祉と医療を実践する会 マンスリーレポート(仮称)20178(試作第6)

「環境激変時の対応を組織としていかに進めるか?

……実践事例からの知見と指針」受講レポート

このレポートは、例会欠席の皆様に例会の模様をお伝えするために発信されるもので、毎月の発信を目指して試行を続けています。報告内容について発題者の了承は得ておりません。

例会での受講者の熱意は十分には伝えきれませんので、次回はどうぞご一緒に参加ください。

皆様の活用の便宜のために、あえてシンプルなワード形式でお届けいたします。

*ご意見などは、伊藤事務局長までお届けください。*

 

1.研究会のあらまし

演 題  「環境激変時の対応を組織としていかに進めるか

……実践事例からの知見と指針

発題者  社会福祉法人恩賜財団済生会支部神奈川県済生会 支部長兼常務理事

正木 義博

進行係  天野社中 代表  天野 武城当会理事

日 時  2017年25日(金) 14:00〜16:30

会 場  東京都新宿区 戸山サンライズ

 

2.発題のあらましと報告者が注目した項目

「組織変革の必要性」「戦略と行動計画の策定」「連携医療を進める」「病院の機能分化連携とその効果」「患者さんへのサービスを考える」「医療データを活用する」「これからの外来を考える」「医療の質をマネジメントする」「医療の質を高める」「これからの事務職を考える」

上記は今回の発題の項目をピックアップしたものですが、これを見ただけでワクワクしませんか?

 

u  イントロダクション

²  済生会神奈川支部の現況

l  済生会神奈川支部は、6つの病院(うち南部・東部病院は500床クラスの大きな病院)と、11の施設を擁する。

l  東部病院は計画当初から横浜市と一緒に事業を推進してきたが、なかなかうまくいかず建物の借り入れが150億円あり、その後も40億円の赤字が積み上がり、借入金の総額は200億円にまで膨らんだ。そんな状況の時に助っ人として、正木氏が熊本から呼びよせられて、再生がスタートした。その後2年で黒字化を達成。現在の東部病院の平均在院日数は7.5日で推移している。下の表をみると外来単価こそ熊本病院には及ばないが、医業収益・入院単価では熊本病院とほぼ拮抗している。

済生会横浜東部病院と熊本病院の比較(当日の発題をもとに報告者が編集)

 

横浜東部病院

熊本病院

(A)病床数

460床

400床

(B)医業収益/

230億円

240億円

(C)1床当り医業収益(B/A)

6千万円

5千万円

(D)入院単価

9万円〜10万円

11万円

(E)外来単価

2万円

4万円

²  「地域医療構想」までの流れ

l  H.25.8.5 社会保障制度改革国民会議 報告書」 がとりまとめられた。(医療・介護提供体制の改革と地域包括ケアシステムなどを提言。ネットワーク化のための制度見直といった内容)

l  【報告者補足】発題者は、この報告書は、「極め付け」で厚労省の医療・介護提供体制改革実現への決意表明と位置付ける。厚労省が覚悟を決めたと言うことだとコメントされた。

u  組織変革の必要性

²  今、病院にとって最も重要なことは、「どんな環境にも対応できる組織への変革」

²  「外部環境への対応」+「健全なる経営組織体への変革」+「医療・経営の質の向上」=病院改革の実行

²  今行うべきは、改善ではなく改革。問題解決の先送りではなく、革新により真の問題解決をすること。そのためにトップリーダーは早く決断を!と言及

u  熊本病院改革へ

1995年熊本病院新築移転時の状況

l  病院の方針、事業計画が不明確

l  職員に対する情報公開は殆どなし

l  病院としての職員教育制度はなし

l  各科、各職種を中心とした動き

l  職員の動きを管理、抑制する仕組み、制度の存在

l  新築移転費用約150億円に対する不安

職員への将来のビジョンや構想が伝わらず、不安やネガティブな意識、皆のベクトルはバラバラ

 

 


l  「短期経営改善計画「3カ年ビジョン」の策定」

「短期経営改善計画「3カ年ビジョン」 ビジョン⇒日本一の急性期病院を目指して

1.  患者サービスの徹底     「患者中心の医療」

2.  地域への貢献        「地域に開かれた病院」

3.  救急医療への取り組み    「断らない救急、36524時間対応」

4.  経営基盤の確立       「入りを計り、出ずるを制す」

5.  組織の整備         「時代に即した組織」

6.  業務改善・効率化へ     「創意工夫と協調」

7.  働きがいのある職場作り   「人事制度の時代への対応」

8.   「適材適所」を       「人材の適正配置」

l  バランスト・スコアカード(BSC)と同じ手法を導入

l  【報告者補足】発題者は「バランスト・スコアカードの名前が示す通り、スコア=具体的な数値目標で示すことが大切」だと述べていた。

u  戦略と行動計画の策定

²  行動計画実践から組織改革への道

l  改善・改革への流れ

l  改善・改革の必要性を知る現状を認識する(DPC分析、経営情報)課題を抽出するビジョンを決める(BSC手法)戦略・戦術を練る、立てる(BSC手法)実行する、行動する成果を見る、評価する

²  BSCをビジョンマネジメントシステムとして使う

²  ビジョンは⇒ミッション・理念に従った目標で、組織の未来像

l  新しいビジョンを設定し、真に素晴らしい病院を目指す

²  全職員で「年度行動計画書」を作る意味

l  全職員のベクトル合わせによる組織の活性化と変革

²  行動計画(アクションプラン)の展開

l  病院のビジョン⇒年度経営方針に沿って「学習と成長の視点」、「顧客満足の視点」、「業務プロセスの視点」、「財務の視点」で、病院全体、診療科別、部署別、委員会別、職員ごとにといった具合で、全部署、全職員が参加することが重要。

東部病院の平成29年度行動計画

【中期ビジョン】

地域医療を支え、目標とされる高度急性期病院になろう 〜県病院との一体運営の確立〜

【スローガン】

「次の10年へのスタートダッシュ 〜さらに上のステージを目指して〜」

l  s-DSC08276【報告者補足】とても明確な中期ビジョン。次の10年は2025年を見越してのスローガンか?

l  行動計画の進捗状況の月次報告を

l  【報告者補足】発題者は、計画が予定通りに進んでいるのかマネジメントをすることが、事務職において大切なことで、計画が青信号で進んでいるのか、黄色なのか、それとも赤信号が燈っているのかをしっかり把握し、必要な対策を講じることが大切だと述べていた。

u  連携医療を進める(済生会熊本病院の例)

²  済生会熊本病院が地域で担っている医療

l  高度急性期(重症度、緊急度が高い医療領域)に特化、総合病院ではない「専門型」「機能特化型」の病院なので、

l  「頑なにビジョンを貫く」そして「連携医療を実践する」ことが大切。

²  のちに「戦略的医療連携(アライアンス)」へと展開

l  「地域で質の高い継続医療を提供する」という連携医療の本来の目的を達成しようという連携の在り方、患者さんの「やりとり」だけが連携医療ではないとの考え方の実践

アライアンス連携の内容

【済生会熊本病院】のアクション

【連携医療機関】のアクション

*  診療技術支援(勉強会、人的支援等)

*  訪問活動による相互理解(医師・看護師・コメディカル・事務)

*  連携医療機関への医療支援

*  早期に患者受け入れ(迅速な病床調整、慢性的重症患者の受け入れ体制づくり

*  毎日の空床状況連絡

*  転帰報告(質的な管理を目的として)、ケーススタディ

*  熊本病院の回診への参加

連携医療の基本的考え

(各医療機関の)医療機能の選択と集中

*  急性期or慢性期の選択

*  診療科の選択

機能の相互補完

*  フォーカス ファクトリー化

*  病診連携・病病連携

それぞれの医療機関のさらなる機能向上と

質向上

*  パートナーシップ

*  医療の質向上

*  地域にて医療を完結

患者さんの満足

←最も重要なこと

u  横浜市東部病院と神奈川県病院の機能分化連携とその効果

県病・東部・新病院の連携における医療機能分担

【病院名】

【機能】

東部病院

二次・三次救急、緊急・高度手術、集中治療、急性期入院、周産期・こども、急性期リハ 等

神奈川県病院

亜急性期・慢性期、一次救急、外来・軽度手術、終末期・緩和ケア、透析、予防、在宅医療支援 等

東神奈川リハビリテーション病院

回復期リハ

u  患者さんへのサービスを考える

²  疾患説明書の作成(熊本病院)

l  70の疾患についての説明書を整備。病気の内容、治療方法、クリニカルパス、退院後の注意事項等、患者さんの要望に応える内容で編集

l  【報告者補足】当日、実際の説明書が会場で回覧された。大きな文字、写真・図表を多用しわかりやすいように工夫されている。特に「退院後の生活について」(人工肛門)では、「熊本市内のオストメイト対応トイレの一覧表」が記載され、「災害時に持ち出さなければいけないモノのリスト」、利用できる社会保険についてや、「患者会」のことまでが丁寧に事細かく記載されていたことには驚嘆させられた。

 

u  s-DSC08274これからの外来を考える

²  外来診療の在り方を考える

l  横浜東部病院の外来患者の分析をすると、受診1回あたり300点未満の再診患者は、患者全体の30%であるが、外来収益の面ではわずかに2.7%。診療科別では循環器内科、整形外科、産婦人科、皮膚科に多い。

l  経済性、効率性だけでは議論出来ないが、病院の機能分化の観点から、他の医療機関にお任せすることが望ましい。

u  医療データを活用する

²  院内の電子カルテデータの抽出と活用

l  電子カルテや医事会計システムに入力されて、データベースに集約されたデータを抽出・分析してフィードバックすることが大切。

l  【報告者補足】よく言われることだが、データを情報に昇華させることが、事務の大切な仕事。

u  医療の質をマネジメント

²  otal uality anegementを実践

l  熊本病院で平成14年「TQMセンター」として発足、24年部に昇格

l  「医療安全管理室」「感染管理室」に加えて、「品質管理室」(医療の質情報の管理、医療の質の維持・向上)を設置

l  【報告者補足】「品質管理室」の設置は、正木氏が製鉄会社で品質管理の仕事をされていた関係で、医療機関にも導入の必要性が高いと判断、導入に至る。

u  これからの事務職を考える

²  事務の業務はマネジメント

l  事務の業務内容を変える必要がある。(地域ニーズ、医療アクセス、診療領域、施設、設備、機能、体制、技術、教育、診療プロセス、診療結果、患者・職員満足、経営管理、投資等)

²  医事・企画室の主な業務

l  医事業務から⇒診療支援へ(診療実績・推移、競合病院との比較・分析結果を提示。診療的側面で支援

l  企画業務から⇒経営支援へ(トップの経営判断のために必要な情報分析結果を提示。経営や運営に関わる提案。経営的側面での支援

²  これからの事務職の業務に医療の知識は必須

病院事務職の役割、仕事とは

*「地域」の中で、絶えず必要とされるように、組織が常に進歩し、最良の医療を提供できるよう支援し、その組織の安定的な経営を企画・運営し、組織に関わる全ての人々の幸福を実現させる

*時には縁の下、時には組織をけん引する役割

*業務管理から⇒組織発展へ

組織の理念・ビジョンに従い、組織をより良い方向へ導く仕組みづくり

u  まとめ

²  今、病院に求められているもの

l  地域において、どのような医療機能にて貢献するか“立ち位置”を明確にすること

これからの病院経営において大事なこと

l  ビジョンを明確にする

l  地域の信頼を集め、仲間を作る

l  より質の高い医療の提供に努力をする

l  組織改革の早期着手をする

l  資源を「人」に集中して

l  職員が一丸となり困難に立ち向かう文化の醸成

 

3.情報交換会の様子

残念ながらこの日主役の正木氏はご都合で参加いただくことが出来ず、大変残念でした。それでも、あたかも正木氏が真ん中に座っていらっしゃるかのように、発題の延長線上で、活発な議論が続きました。

下にお誘い文も書きましたが、情報交換会に出席すると例会とは一味違う視野が開けます。ぜひ皆様の参加をお待ちしています。

【情報交換会に参加しませんか】

毎回例会の後に、場所を移しお酒も入り気分も新たに、発題者を輪の中心にして、ざっくばらんに話を展開しています。発題会場では質問しにくかった内容でも、ここならば大丈夫です。日ごろ実践してきたことを仲間に伝えていただくことも、大歓迎です。もし初めてで、「おもしろそうだけれども敷居が高いな」と感じられましたらエスコートします。当会のスタッフにお気楽に声をかけてください。新しい仲間との出会いを、心待ちにしております。

 

4.報告者の感想

★「ナイトプール」が流行語になったものの、今年の東京の夏は、雨や気温の低い日が多く、大粒の雹が降ったり、かつてない様な局所的な豪雨に見舞われたりでしたが、例会のこの日は高温警報が出るような暑い日。今回の発題は酷暑に負けず劣らずの熱いものであったにもかかわらず、参加者が少なかったことは大変残念でした。例会のPR方法を工夫しなければいけないのかなあ。

★正木氏が民間の会社から病院に移られた当初、どの様にマネジメントすべきか迷った時に、ドラッカーの著作を片っ端から読んだというお話をされていましたね。いや流石です。

★今でこそ、医療の連携が当たり前のように語られていますが、それぞれの医療機関がばらばらに医療を展開していた時代に、いち早く熊本発で「医療連携」を推進してこられたことは、正に先見の明があったのだと改めて感じた次第です。

★「これからの病院経営において大事なこと」に掲げられている、「ビジョンを明確にし、地域の信頼を集め、仲間を作り、より質の高い医療の提供に努力し、組織改革に早期に着手し、資源を“人”に集中して、職員が一丸となり困難に立ち向かう文化を醸成」するという内容は、産業界に限らず医療界においても、もはや当たり前のことのように思えますが、これをブレずに着実に成し遂げてきた正木氏の手腕は素晴らしいと感じました。

★病院事務職の役割、仕事とは、「組織が常に進歩し、最良の医療を提供できるよう、時には縁の下、時には組織をけん引する役割で支援し、その組織の安定的な経営を企画・運営し、業務管理から歩を進め組織発展へと導くことである」とする事務方の正木さんの言葉だけに説得力ありでした。

        (報告者・外山和也)

 

 

 実践する会 マンスリーレポート

第423回例会

平成30年度同時改定を見据えて

……早めに手を打たなければならないこと

発題者:株式会社ソラスト 医療事業本部 病院経営支援課

水谷 公治

これからの福祉と医療を実践する会 マンスリーレポート(仮称)20177(試作第5)

このレポートは、例会欠席の皆様に例会の模様をお伝えするために発信されるもので、毎月の発信を目指して試行を続けます。今回は報告内容について、発題者に監修をしていただきました。

例会での受講者の熱意は十分には伝えきれませんので、次回はどうぞご一緒に参加ください。

皆様の活用の便宜のために、あえてシンプルなワード形式でお届けいたします。

*ご意見などは、伊藤事務局長までお届けください。*

 

1.研究会のあらまし

演 題  「平成30年度同時改定を見据え

……早めに手を打たなければならないこと

発題者  株式会社ソラスト 医療事業本部 病院経営支援課

 水谷 公治

進行係  当会企画担当運営委員 外山 和也

日 時  2017年21日(金) 14:00〜16:30

会 場  東京都新宿区 戸山サンライズ

 

2.発題のあらましと報告者が注目した項目

u  「本日お伝えしたいこと」

²  2018年度には、医療費適正化計画、医療計画、介護計画などが一斉に更新される。改革チャンスはここしかない。

l  常識が変わる(パラダイムシフト)。行動変容を院内に。

²  地域の人口構成の著しい変化に、医療機関相互と介護・福祉施設の役割分担(グレイゾーン解消)と境目のない連携(ケアプランによる患者の流れ)を強化。

l  患者・利用者が必要とすることを連携の中で円滑に提供。

²  介護支援専門員(ケアマネジャ)がカギを握る。育成と連携が重要事項。

l  医療・看護等の技術を基に、患者・利用者に最善を提供。

²  情報連携はICTを活用した仕組みに変わる。自院・自施設のポジショニングはどこなのか。今行っておくべきことは何なのか。

l  地域ICTネットワークへの参加が基本に。

²  【報告者補足】発題者ご本人が、上記の「本日お伝えしたいこと」に今回の発題は集約されて

²  いると言う。「医療制度が出来た時」とはまったく変化してしまった。今までの常識が変わる

²  (パラダイムシフト)。故に、「行動の変容を」。「ゆでガエルにならないように」と警鐘を鳴らす。

u  当日は大きく「4つのテーマ」で発題された

²  @改定の背景・A改定に向けた検討課題・B具体的な検討項目・C改定に向けた医療機関の対応

【改定の背景】

u  2025年に目指す姿 達成のための計画」(スライドP.18

²  今回(2018年)の次の同時改定は2024年。計画目標2025年の前は微調整程度と言われている。

²  今回は複数計画も一斉更新を予定され、大きく仕組みを変える機会はここしかないと考えられる。

²  【報告者補足】2025年までの年度別計画表は、再度チェックする必要あり。(P.18

u  s-DSC08142「我が国の人口動態」

²  2018年の人口動態は、出生数では100万人を切り約98万人、死亡数は約130万人。

²  (平均寿命)−(健康寿命)=男で8.42歳、女で12.4

l  健康寿命が尽きたあとの「生きる」を支えるには、医療・介護に加えて誰かのお世話になることが必要。

寝たきり期間世界一返上を!

u  「人口動態からみた課題への対応」

²  2025年、団塊の世代の全てが75歳以上となる。健康寿命が尽きてお世話を受ける非生産世代が急増する。

国民医療費は40兆円を超えて増え続けている!(消費税を除く税収も40兆円。これと同じ位の金額が

医療に消えてしまう)。支える世代は減少し、看取り難民は47万人と予測されている。

(遠隔医療で看護師が看取りをすることになるのか?)

²  医療・介護の需給バランスが崩れる→保つことが急務。その為の施策は、

l  地域医療構想(病床再編)明らかに急性期は多い

l  医療費適正化計画(医療費抑制)

l  地域で見守る地域包括ケアシステムの構築

u  「経済財政諮問会議から厚労省へ提言」

²  骨太方針2016-2017では2020年度のプライマリーバランス(以下、PB)黒字化を目指し44の工程表を作成。

²  1990年と2015年の歳入・歳出を比較すると、社会保障費(医療、年金、介護等)の伸びは大きく、

公債金の増加もまた大きく膨らみ、PB2020年黒字化は危うい。

Ø  今までどおりのことは行えない(官邸)。次期改定は、前回にも増して政治主導で進むことは明白だ。

²  【報告者補足】PBとは「基礎的財政収支」と言い、PB=(借金を除く歳入)-(借金の元利払いを除く歳出)の

数式で算出する。PBが黒字になると、公共事業・社会保障等の政策経費を借金に頼らず賄える。718日の

内閣府の発表では、2020年の黒字化は難しく、高成長のシナリオで推移した場合で8.2兆円の赤字。

現状維持の推移で10.7兆円の赤字となる試算。

u  「無視できない「44の改革工程表」の行方」(経済・財政再生アクションプログラム)

²  目標は、201910月からの消費税10%への引き上げ。2020年度PB黒字化の達成。

²  着実な推進のために「社会保障分野44項目の改革」工程表を作成

Ø  社会保障分野

l  医療・介護提供体制の適正化・インセンティブ改革・公的サービスの産業化・負担能力に応じた公平な負担、給付の適正化 ・薬価、調剤等の診療報酬及び医薬品等に係る改革・年金・生活保護等

 

u  「経常収支マイナスの要因は人件費?」

²   人件費が高い!のではなく、多くは分母の医業収益が低いために人件費率が高くなっている!

病院は「労働集約型」。医業収益を増やすカギは、一人当たり労働生産性の向上。人財は「原価」であって、「費用」ではない

²  【報告者補足】投下した人財に見合う適正な収益を確保することが大切。

s-DSC08150

【改定に向けた検討課題】

u  2018年度改定医療・介護の連携(整合性)の主な検討課題」(抜粋)

ここではキーワードのみを列記する。

²  介護療養病床の見直し(新施設体系)、訪問看護のサービス(共生型・混合介護)、居宅等における看取り支援、

医療機能の分化・連携の強化、地域包括ケアシステムの構築推進、入院医療(医療機能、患者の状態に応じた評価、

チーム医療の推進)、外来医療(かかりつけ医・薬剤師・薬局機能の連携、紹介状なしの大病院受診時の定額負担)、

在宅医療(重症度や居住形態、患者の特性に応じた評価)、維持期のリハビリテーション、

質の高い医療の実現(アウトカムに基づく評価 )、重点分野・個別分野に係る質の高い医療提供の推進

(緩和ケアを含むがん患者・認知症患者への質の高い医療、精神疾患患者への医療提供や地域移行・地域生活支援、

外来や入院でのリハビリ、口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した歯科医療、医薬品、医療機器等の適切な評価、

次世代の医療を担うサービスイノベーションの推進(バイオテクノロジー、ICT、AI(人工知能)など)、

「早めに手を打たなければならないこと」を含めて解説。

 

【具体的な検討項目】

u  「入院患者の動向」

²  減少⇒ 病院数、病床数、稼動率、平均在院日数

²  増加⇒ 医師数、65歳以上の入院患者占有率

u  「目をつぶれない入院患者像の変化」 改定議論の底辺にあると考えられること

²  20年ほど前

Ø  患者平均年齢約60歳→突然の発症や受傷→急性期抑えれば多くが社会復帰可能

²  現   在

Ø  患者平均年齢70歳超→慢性期疾患をベースとした骨折や肺炎、認知症→急性期抑えても廃用など社会復帰率の低下

u  「介護保険 現状と課題」

²  課題:介護保険制度の持続可能性の確保のための重点化・効率化

Ø  資源投入量が低い患者⇒ 病院外来フォロー・退院促進、介護人材の早期育成

u  「新介護保険法2017成立」

²  自立支援・重度化防止、地域包括ケアシステム推進、医療・介護の連携介護医療院」の新設

地域共生社会(今までにないこと)の実現、所得層の3割負担

u  「医療と介護の連携概要」

²  テーマ(場面)@退院支援、A日常療養支援、B急変時の対応、C看取り

²  サービス(支援)(1)看取り、(2)訪問看護、(3)リハビリテーション、(4)関係者・関係機関の調整・連携

Ø  医療職と介護支援専門職間の相互理解と連携

²  !どのように『通訳』する? ここがカギ

 

【改定に向けた医療機関の対応】

u  「医療者と介護者に必要なパラダイムシフト」

²  医療の再編

Ø  治すから退院後の生活を考えた「治し支える医療」の提供へ

²  ※医療提供の放棄では無く、どうすれば機能改善、社会復帰できるかを意識

l  ⇒急性期の医療職だからこそ、退院後に困らないケア提供が必須

Ø  病院の病床から在宅や在宅系施設を病床扱いへ

²  自院に何ができて、果たすべき役割は何なのか

²  DPC等電子データを分析し、地域ニーズへ的確に対応

²  「地域医療構想」で担うべき機能を保健所等と事前協議

²  介護サービスの再編

Ø  在宅での医療需要が増える・介護技術提供範囲の拡大・複雑化への対応・

お世話」で支えるから「活きる」を支える・医療補助や混合介護への対策

 

3.情報交換会の様子

例会に引き続き1階のレストランに場所を変え、発題者を囲んでの情報交換会となった。例会の余韻を残して「熱く」

情報交換を行った。例会の冒頭で「改定の背景」を丁寧に説明してもらったおかげで、各論に移ってからも

よく理解出来たとの感想が寄せられた。次に「ケアマネジャー」論となった。介護を出自とするケアマネが多く、

医療と介護の間に立つキーマンとして、もっと医療のことを勉強してスキルアップする必要があるという結論に至る。

そして本丸の次期改定については、抑制の材料はクスリしかないだろうということで意見の一致をみた。

なお、この日の東京は大変暑く(こちらは「熱く」ではなく)、この日名古屋から出向かれた発題者曰く、

「東京の方が名古屋より暑い!」それもそのはず、外はすっかり暗くなり、会がお開きになっても気温は優に30度を超えていたのだから。

 

4.報告者の感想

スライド総数98枚。発題予定は1530までだったが、その予定時間を越える濃密で熱い発題となった。

7月のこの時期にもかかわらず、中医協等で議論されてきた内容を細部まで読み込み・分析して、

よくぞここまで方向性を示して頂いたと思う。次のステップは、今日の発題をヒントに自院・自施設が

これからどのような方向に進むべきか、内部で十分に検討しなくてはならない。

発題の中で語られたように、次期改定は前回にも増して政治主導で進み、財政的には抑制の色が強くなることは

間違いないだろう。そのような環境下で、医療・介護の質を保持していかなくてはならない。辛いところだ。

スライド(P.96)で示されたように、「量の拡大⇒質の改善へ」、「行政による規制⇒当事者による規律へ」、

「キュア中心⇒ケア中心へ」、「発散⇒統合へ」と時代は変化する。

課題は多いが、ICTや介護ロボットなどの最新のテクノロジーへの期待に夢は膨らむ。

すでに押し寄せてきている波に乗り遅れないよう、対応することが肝要。

正にパラダイムシフトがおきている。

★当会では、2018年度の同時改定の全貌がほぼ見えてくる来年2月、同時改定の詳細をテーマとする例会を予定している。今回参加された方も聴き逃してしまった方も是非参加願いたい。

 (報告者・外山和也)

 

 

 

 

 

実践する会 マンスリーレポート

第422回例会

急性期も回復期も慢性期も、進む二極化へのまだ間に合う対応策

……究極は高度急性期病院と多機能型地域病院か

発題者:一般社団法人日本慢性期医療協会 会長  医療法人平成博愛会理事長

武久 洋三

これからの福祉と医療を実践する会 マンスリーレポート(仮称)20176(試作第4)

「急性期も回復期も慢性期も、進む二極化へのまだ間に合う対応策

……究極は高度急性期病院と多機能型地域病院か」受講レポート

このレポートは、研究会欠席の皆様に研究会の模様をお伝えするために発信されるもので、毎月の発信を目指して試行を続けます。報告内容について発題者の了承は得ておりません。

研究会での受講者の熱意は十分には伝えきれませんので、次回はどうぞご一緒に参加ください。

皆様の活用の便宜のために、あえてシンプルなワード形式でお届けいたします。

ご意見などは、伊藤事務局長までお届けください。

 

1.研究会のあらまし

演 題  「急性期も回復期も慢性期も、進む二極化へのまだ間に合う対応策

……究極は高度急性期病院と多機能型地域病院か

発題者  一般社団法人日本慢性期医療協会会長医療法人平成博愛会理事長 武久 洋三

進行係  天野社中 代表  天野 武城当会理事

日 時  2017年月1日(金) 14:00〜16:30

会 場  東京都新宿区 戸山サンライズ

 

2.発題のあらましと報告者が注目した項目

u  「このままでは税金を払う人が減って、税金を使う人が増え続ける」

²  出生数は、第2次ベビーブームの1973年の209万人から減り続け、2020年には83万人

2060年には48万人になると推計されている。一方で医療費2015年の42.3兆円

2025年には57.8兆円になると試算されている。(報告者追記:少子・超高齢化の日本で、医療福祉の効率化は急務の課題)

u  「こうすれば日本の医療費は半分になる」

²  75歳以上の後期高齢者の入院費が平均4.5万円/日として、これが2.5万円で済むとしたら、その差は2万円/

²  地域包括ケア病棟と療養病棟入院基本料1での、11日あたりの入院費平均は約2.5万円

²  75歳以上の後期高齢者人口1,641万人の4.2%の約70万人が、いづれかの病床に入院しており、

その平均が4.5万円。うち20万人は高度急性期での治療が必要として、残りの50万人が、

地域包括ケア病棟等で2.5万円となればその差は12万円。

l  50万人×2万円×365日=36,500億円(年間)の効率化が可能となり、しかも、より良い治療効果が期待できる。

u  「日本の医療費の無駄のポイントは即、急性期でもない中途半端な急性期病床に多くの慢性期患者が

長期に入院していることに原因している」

u  「日本にはどうして寝たきりが多いかを考えたことはあるか」

²  高齢者の寝たきり率を国際比較すると、日本を100として、アメリカ20・イギリス30・デンマーク25

スウェーデン10程度。なぜ日本には寝たきりが多いのか?日本とアメリカの寝たきり率の差は

そのまま平均在院日数の差。平均在院日数は日本で29.9日・アメリカは6.1

u  「寝たきりは急性期医療の治療中と治療後の継続入院中に主に作られるのです」

²  急性期病院での入院期間が短ければ、急性期後の慢性期病院での入院期間も短く、

また、急性期病院での入院期間が短い方が、1日当たりのFIM効率の高いことがデータから実証されている。

u  「急性期病床に慢性期患者が多く入院しているとしたら、そこは急性期病床としてよいのか」(報告者注目)

²  今まで、厚労省には「急性期とは尊いもので神聖なもの」という固定概念があった。

その典型が特定除外制度である。(2014年全廃)

²  2005年小泉郵政選挙で自民党が大勝し、厚労省に対し「混合医療の解禁」と「医療費のGNPへのCAP制」を強く要求。

しかし当時の尾辻厚生労働大臣はいずれも拒否。その替わりに「@平均在院日数の削減」「A特定健診制度による予防政策」を約束。

²  @を達成するためには、平均在院日数の長い療養病床を減らしたらよいと考え、療養病床を10万床減らすという強硬政策が行われた。

l 
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この時、一般病床の特定除外は継続された。

²  その結果、71の病床に大量の特定除外の慢性期患者が温存され、10万人〜15万人の高い入院費が野放しとなった。

l  慢性期患者が71201に入院した場合の、1日あたりの差は約3万円〜5万円。

²  71は当初の予想の5万床の7倍にまで急増した。

l  看護師数だけが条件でその他の縛りが少なく、入院している患者はどうであろうと、入院期間がいくら長かろうと算定出来た。

l  【試算171一般病床と201医療療養病床の点数の差を5万円とすると、

特定除外患者が201医療療養病床に入院したと仮定すると、5万円×10万人×365日=18,250億円(年間)となる。

l  【試算271が当初予想の5万床から35万床に30万床増えてしまった。71101の点数差は259点、

30万床×2,590円×365日=2,836500万円(年間)となる。

²  今の官僚は、この時の失敗を取り戻そうとしている。(報告者注目)

 

u  「医療の機能分化がますます進む」

²  (究極は)高度急性期病院と地域多機能型病院の2つに大別されるだろう。

²  地域多機能型病院であるための条件は、@ケア力とリハビリ力の強化A救急患者受け入れ強化

B患者はすべて受け入れるC退院先の確保D在宅療養支援機能の強化

²  老人収容所的療養病院はやがて消滅する。療養病床は、慢性期治療病棟としてしか評価されない。

²  地域多機能型病院での治療は、多臓器の身体合併症の後期高齢者が多いため、総合診療専門医機能を持つ習熟した医師が必要。

u  「リハビリの完全包括化を考える時期に来ている」

²  リハビリテーション革命7つの提言。@急性期リハの充実A癌リハの充実B出来高から完全包括制へ

C単位数評価からアウトカム評価へD知的リハビリの重視E嚥下・排泄リハの優先F高齢者リハの確立。

u  「高度急性期病院同士の競争が激しくなる」

²  日赤、済生会、厚生連など全国チェーン病院群も病院により機能分化される。

²  地域医療構想に関するWGは、急性期からの機能転換の話し合いの際に、各病院の急性期機能の偏差値とも言える

「急性期指標」の活用を促した。

²  中途半端な自称急性期病院がいよいよ客観的な指標により、医療界から追放されるだろう。

u  「地域急性期は地域包括ケア病棟に」

²  地域包括ケア病棟では、包括で2単位しかリハをしない病院と、患者によって46単位行う病院とでは当然、

その成果に大きな差がつきます。

²  地方の公立・私的病院は、すでに回リハ病棟にも参入しており、回リハ専門病院は利益率が良く、一部で20%近いことが公表された。

l  財務省・厚労省は次期改定で回リハ病棟の報酬を厳密化して利益を減らすであろう。

l  利益率の高い病院は継続可能・低い病院は負け組となるかも。

u  「まだ病院が患者を選べると思っている時代錯誤感」

²  よい病院、選ばれる病院とは、迅速で適切な治療で病気を治してくれて早く日常に帰してくれることにつきる。

²  今や完全にIT時代。病院の評判は口コミからWebや診療の成果により判断されるようになる。

²  慢性期病院だからといって地域の高齢者の急変受診依頼を拒絶していたらどうなるか。

²  看取りを最大限に優先する慢性期病院が、地域で信頼されるであろうか。

²  36524時間患者の受け入れができなければ競争に勝てない。

u  「介護医療院への病床転換はまさに適切な政策である」

u  「入院基本料は、その病棟での看護師の数の多寡で診療報酬が決まっている。

現行制度は正に旧態然たるものであり、至急改革が必要である」

²  病棟に医師、看護師以外にも薬剤師、PTOTST、社会福祉士、管理栄養士、介護福祉士、臨床検査技師、

診療情報管理士、歯科衛生士がいる病院での入院機能が著しく向上している現状を評価すべし。

u  「医療区分制度は既に制度疲労を起こしている。慢性期DPCを採用して一人の患者が急性期から在宅まで

同じ制度で医療情報を収集することによって適切な診療体制を組み立ててほしい」

(武久先生が考える)日本の医療が生き残るための条件

@急性期指標により急性期病床を半減する。

A中途半端な急性期病院の平均在院日数を短縮し、日本の総入院日数を半減する。

B健康寿命と平均寿命の差を半減させる。

CEPA等外国人技能実習生の大幅拡大。

D定年を70歳として、元気高齢者を活用する。

u  「良質な慢性期医療がなければ、日本の医療は成り立たない」

 

3.情報交換会の様子

例会に
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引き続き場所を変えての情報交換会では、武久先生の薫陶を受けられたメンバーの方が多数参加された。

若い方が多くいつもの情報交換会よりも華やかな雰囲気となった。今回の参加者の皆さんはどちらかといえば

介護系の施設に従事する方が多く、当日の医療政策が中心の武久先生のお話はとても新鮮に感じられたようだ。

例会とは違い、お酒がほどほど廻り、所属も・職種も・役職も越えて、本音で語り合えた。地方からの参加者の中には、

終電ギリギリまでお付き合いいただいた強者も。

(写真は「情報交換会」恒例の「時計台の下で演説」。参加者が壁掛け時計の下で順番に

「私は誰」「例会の感想」「近ごろ思うこと」等、思いの丈を語る儀式)

4.報告者の感想

★武久先生のいつもの「均等割り付けの独特なスタイルのスライド」(拝見すると何故かホットします)で、

先生のお考えを簡潔に鋭く「アフォリズム」とも言える表現で示された。その珠玉の「アフォリズム」表現は、

膨大なデータの裏付けをベースとして、中医協等の資料を丹念に読み込み、そこに先生の経験値に基づいた

深い考察の上に成り立っていることがよく分かった。

★今講演で報告者が一番注目した点は、「急性期病床に慢性期患者が多く入院しているとしたら、

そこは急性期病床としてよいのか」のくだりだ。

厚労省は小泉政権の当時、「平均在院日数の削減」のためには、平均在院日数が長い療養病床を減らしたらよいと考え、

療養病床を10万床減らすという強硬政策に打って出た。一方で急性期の一般病床では特定除外は継続、

その結果として71の病床に大量の特定除外の慢性期患者が温存され、10万人〜15万人の高い入院費が野放しとなり、

201の医療療養病床に入院した場合との差額は、10年で182500億円との試算も示された。

また、71病床は看護師数だけが条件でその他の縛りが少なく、入院している患者はどうであろうと、

入院期間がいくら長かろうと算定出来た。そのため当初の予想の5万床の7倍にまで拡大してしまった。

氏は「今の官僚は、この時の失敗を取り戻そうとしている」と見解を示されている。

当時官僚には、「良質な慢性期医療がなければ、日本の医療は成り立たない」という見識はなかったのであろう。

★武久先生は、急性期病床では看護師を集めさえすれば高い入院料がとれて、リハビリテーションであれば

単位数さえこなせば報酬になるという時代ではなくなった。また、慢性期では看取りを最優先する病院は淘汰され

36524時間患者の受け入れが出来なければ競争には勝てない時代となったと明言している。

30年同時改定から始まる医療・福祉革命をどう乗り切るか?」

「よい病院、選ばれる病院とは、迅速で適切な治療で病気を治してくれて早く日常に帰してくれることにつきる。」

きわめて当たり前のことが出来ていない現状の中に、今後の医療・福祉革命をどう乗り切るかのヒントが隠されていると思う

        (報告者・外山和也)

 

 

 

 

 

実践する会 マンスリーレポート

第419回例会

高齢者施設の成否はなぜ生まれるのか……データに基づく経営ノウハウの整理と提言

発題者:株式会社 タムラプランニング&オペレーティング 代表取締役  田村 明孝

これからの福祉と医療を実践する会 マンスリーレポート(仮称)20173(試作第3)

高齢者施設の成否はなぜ生まれるのか……データに基づく経営ノウハウの整理と提言」受講リポート

このリポートは、研究会欠席の皆様に研究会の模様をお伝えするために発信されるもので、毎月の発信を目指して試行を続けます。報告内容について発題者の了承は得ておりません。

研究会での受講者の熱意は十分には伝えきれませんので、次回はどうぞご一緒にご参加ください。

皆様の活用の便宜のために、あえてシンプルなワード形式でお届けいたします。

ご意見などは、伊藤事務局長までお届けください。

 

1.研究会のあらまし

演 題  「高齢者施設の成否はなぜ生まれるのか

……データに基づく経営ノウハウの整理と提言

発題者  株式会社タムラプランニング&オペレーティング  代表取締役  田村 明孝 氏

進行係  ヘルスケアマーケティング研究所 所長  鈴木 喜六(当会財務担当理事)

日 時  2017年3月17日(金) 14:00〜16:30

会 場  東京都新宿区 戸山サンライズ

 

2.発題のあらましと報告者が注目した項目

★はじめに、「本日のコンテンツ」として全体像が示された・

1. 日本の高齢者住宅・施設は常に不足状況

 1. 高齢者人口に対して6%が必要(要介護3以上6.3%)に対して4.2%しか供給がない

2. 2030年まで80歳以上高齢者の増加

2. 介護保険事業計画

1. 3期から第5期の実績と第6期計画

3. 日本創生会議の東京圏高齢化危機回避戦略レポートとその検証結果

1. 施設は現在も不足しているが、地域密着や居宅サービスを促進することで改善効果

 2. 住宅型やサ付きの特定施設化で対応も視野に

 3. 日本版CCRC

 4. 弊社データを使い都市別介護保険施設整備予測・利用者数の試算

5. 高齢者住宅・施設の将来予測

6. 有料老人ホームのブランド分析から探る売れ筋ホーム

1. 入居率・居室面積・退去率・費用・人員配置

7. サービス付き高齢者向け住宅

8. 北欧の取り組み

1. スウェーデン・デンマークの高齢者住宅

2. デンマークオールボー市の取り組み

3. スウェーデン ヴェステロ―ス市 最先端の省エネ住

 

★はじめに、高齢者人口、現在の生活場所、高齢者住宅・施設の種類と供給量などが、

データとその背景説明を加えて報告された。

★次に、介護保険事業計画の内容と実現状況について報告があった。その中で計画値が、第5期(平成26年度まで)

に比して、第6期計画(平成2729年度)が急減していることが提示された。

★日本創成会議が「東京圏高齢化危機回避戦略」において、「東京圏の高齢者の地方移住環境の整備」とした提言について、

同社が検証した結果について報告があった。同会議が指摘していない「• 高齢者は地方への住み替えを本当に考えているか?

• 居住環境の変化は高齢者にダメージを与える」などの視点から、「既存の有料老人ホームの共用スペースや

食堂・浴室などの地域開放を目指し、新規開設ホームには補助金を出して地域交流室などを作ることにより、

 都市部の介護不足は都市部で解決できる」などの意見が示された。

★同社データを使っての「有料老人ホームのブランド分析から探る売れ筋ホーム」が示された。

これは事業者の事業理念を確実に反映すべき項目と高齢者施設の成否の関係を示すもので、

入居率に影響を及ぼす可能性のある項目について、実態が報告された。但しこれは同社の極めて貴重な資源であり、

有料会員に対するサービス商品であるのでスライドによる紹介に留まった

(スライドには個別施設名称が記載されているが、そこまではメモが取れなかった。

しかし見る人が見れば、深い示唆を得られたと思われる)

★そこでこの要因を振り返ると次のようであった(報告者の必死の聞き取り結果です。

なるほどといえる項目もあれば意外に感じる項目もあるが、少し勘違いがあるかもしれない)

 

☆入居一時金の水準は、競争激化で下がり、サービス内容の差別化に成功すれば高くできる傾向がある。

☆供給量の多い事業者だからと言って入居率が高い傾向はみられない(報告者の私見:

これは供給量の多い事業者は知名度が高くてもそのことが入居率に大きな影響を与えていないことであり、

小規模でも確実な事業展開を行うことの方が重要であることを示唆していると感じた)

☆月額費用の高低を見ると、大都市なのに大阪が低い傾向にあるがこれは生活保護などの

「貧困ビジネス」が影響しているのかもしれない。宮崎県も低い水準にある。

☆月額利用料金の高低自体は、影響が少ない。

☆介護職員の確保は全国的に大きな課題となっているが、職員数の多少は、影響がある。

☆介護度が重いほうが、入居率は高い。

★サービス付き高齢者向け住宅については、過去の頻繁な改正を見ると、今後もなお先行きが残る。

★北欧の高齢者住居の最新情報として、@スウェーデン; 高齢者特別住居・サービスハウス(シニア住宅)

   Aデンマーク;  プライエボーリ・エルダ−ボーの事例が紹介された。ここでは、施設ハードだけではなく

行政の「本人自身でできることはやってもらう」との方針などが注目を集め、質問も出された。

 

3.質疑応答のあらまし

★いくつかの質疑に加えて、今後は行政のきめ細かい対応が求められるなどの回答があった。

★現実には、介護事業者間のサービス競争原理が働いておらず、サービス改善が進んでいない。

サービスに対する要求が強い団塊の世代がニーズを表面化させることにより、

今後のサービス向上が期待できるかもしれないとの、予測が示された。

★厚労省計画の中にある「介護医療院」については、居室面積が狭いので、限界があるとの意見が示された。

 

4.情報交換会のあらまし

引き続き、場所を変えての情報交換会では多くの情報が行き来したが、拾い上げると次の様であった。

★高齢者の生活などを考慮する場合には、高齢者(75歳以上)を地域でどのように活用するかがポイントとなる。

また、欧州人の個人主義と日本人の「群れ依存傾向」の違いも大きいことに注目する必要がある。

★同社が運営する「高齢者住宅入居相談センター(末尾に記載)」の活動を見ると、高齢者・高齢者予備者の関心事は、

5年前には「親をどうするか」だったが、今は「自分が今後どうするか」に移りつつある。

★街づくりと施設づくりの関係については、社会科学者の意見などを活用することが望まれる。

そこでは大きなコミュニティではなく、目の届くようなコミュニティが望まれる。

 

5報告者の感想

★同社が蓄積した各種データは、まさに膨大・詳細であり、事業者が見れば新しい発見があると思われた。

★同社が運営する「高齢者住宅入居相談センター」では、「どの施設に入居したらよいのか」との利用者からの相談を受けている。

この種の相談は、緊急を要すること、利用者が適切な情報を持っていないこと、判断基準がわかりにくいことで

従来からニーズが強い。そのために多くの事業者が相談に応じているが、そのほとんどが「相談を無料で受けて、

施設を紹介し、成約後に施設から報酬を得る」形態をとっている。しかし同社は「相談者から会費などを受け取り、施設を紹介する。

施設からの報酬はない」形態をとっている。両者の良しあしを決めつけることは出来ないが、納得性・客観性の点では差があるといえそうだ。

                               (報告者・鈴木喜六)

 

 

 

 

 

実践する会 マンスリーレポート

特別研修会vol.60

医事課として経営支援に貢献し働き甲斐も手に入れよう!

発題者:和久井敏夫運営委員天野武城副理事長

これからの福祉と医療を実践する会 マンスリーレポート(仮称) 20173(試作第2)

特別研修会vol.60医事課として経営支援に貢献し働き甲斐も手に入れよう!」受講レポート

このリポートは、研究会欠席の皆様に研究会の模様をお伝えするために発信されるもので、毎月の発信を目指して試行を続けます。

研究会での受講者の熱意は十分には伝えきれませんので、次回はどうぞご一緒にご参加ください。

皆様の活用の便宜のために、あえてシンプルなワード形式でお届けいたします。

ご意見などは、伊藤事務局長までお届けください。

 

特別研修会vol.60

「医事課として経営支援に貢献し働き甲斐も手に入れよう!」受講レポート

 

1.研究会のあらまし

演 題  「【医事課特研】医事課として経営支援に貢献し働き甲斐も手に入れよう!

発題者  和久井 敏夫(当会運営委員 第1課・第2課を担当)

天野 武城(当会副理事長 第3課を担当、運営を兼務)

日 時  2017218日(土) 10001600

      追加の情報交換会   16301830

会 場  東京都新宿区 戸山サンライズ

 

2.発題のあらましと報告者が注目した項目

1)全体の構成は次のようだった。

第1課      仲間の汗を無駄にするまい(発題と質疑応答)    

第2課      宝の持ち腐れはいたしません(発題と質疑応答)

第3課      すばらしきかな経営支援部門(発題と質疑応答)

  グループワーク(話し合いと全体への報告)

  総括

追加の情報交換会

 

2)第1課のあらまし

「仲間の汗を無駄にするまい」を、次のテーマに具体化させて発題した。       

★レセプト請求の精度を上げる

ここでは「基本は国保連合会・社会保険支払基金からの増減点連絡票をよく研究すること。

減点・査定されたレセプトを再発行し、減点査定の事由から原因を突き止める」ことが重要である。

★職員の資格などの施設基準を確保する

ここでは、医師・看護師・薬剤師の専門性に関する資格の種類・人数は人事・総務または看護部長が

必ず把握しているので、この情報を医事課が確実に収集することが重要となる。

さらに将来を見据えて、必要と思われる病院の将来像から問題意識をもって施設基準の情報を

把握することが望まれる。

★医療職員にレセプトの仕組みを啓蒙する

医療スタッフが診療報酬を正しく理解し、漏れをなくしレセプトに結び付けるように努める。

★増収と経営安定・理念実現の関係を理解する

増収・経営安定があってこそ、地域医療を守り共に社会に貢献することで、理念現実が生まれる。

 

3)第2課のあらまし

「宝の持ち腐れはいたしません」を、次のテーマに具体化させて発題した。

★医事課の持っているデータのあらまし

医療行為からそれに関わるもの、人(DR)・診療科・患者(人数・年齢・地域)全て入力したものは、

経営戦略情報の基となる。

★医事課データの経営への活用

医事課は各部門別の診療報酬を把握して毎月発表することにより、より詳しく病院の経営状況が分かると共に

データが経営への活用及び経営の参画意識が持てるようになる。

★データを中心とする改善策の討議

データは医療行為の結果にしかすぎない。結果に至るまでの過程を掘り下げて精査・注視することが必要となる。

「この様にすれば必ずどの医療機関でも解決します」……という処方箋はないと思う。

悩んでいる問題に対してその職場全員に問題を投げかけし、皆で悩んで問題を共有することも1つの策だろう。

 

4)第3課のあらまし

「すばらしきかな経営支援部門」を、次のテーマに具体化させて発題した。

★組織上の医事課の位置づけについて次の項目を解説した。

自施設の理念

自施設の組織図上の位置づけ

診療情報管理部門

事務管理部門?診療部門?

関連組織との関係・連携など

医事課業務について次の項目を解説した。

医事課の基本方針

医事課の職務分掌

各種医事統計の取りまとめと報告

窓口の収納業務

レセプト作成点検返戻・査定への対応

未収金の管理とその対応など

チーム医療における医事課業務について次の項目を解説した。

ファシリテーター役

診療部門

薬剤部門

看護部門

手術部門

リハビリテーション部門

臨床検査部門

画像診断放射部門

栄養管理部門

診療情報管理部門

医師事務作業補助者

夜間業務(直営の場合)など

 

4)発題を中心とした質疑応答

  3回の発題ごとに質疑応答が活発に行われた。さらに、「私の病院はこうやっています」の事例報告も相次ぎ、

加えて「先ほどの発言者の方に質問です」などの意見交流も行われ、受講者同士の相互啓発という

当会ならではの研究会となったことが印象的だった。

 

5)グループワーク(話し合いと全体への報告)

  ★受講者を5つにグルーピングして、意見交換を行った。テーマは5グループ共通で「医事課職員の私は、

院内でのファシリテーターとしてどの様に活動するか」を中心とした。受講者は初対面者同士にもかかわらず、

率直で幅広い意見効果が行われた。その後、各グループから全体への報告が行われ、

受講者全員が情報を共有することができた。

  ★各グループからの報告のあらましは、次のようであった(紙面の都合で、半分程度を削除しました)

  Aグループ:医療スタッフはレセプトでお金になるとの意識が薄いので、勉強会などをする必要がある。

医事のデータが各部署の役に立つかどうかを見るために、各部署と交流する必要があり、

飲み会などの行事を法人全体で行うことが望ましい。

Bグループ:医事課がファシリテーターとして活躍している例とそうでない例が見られた。

病院はともすればセクショナリズムがあるので、縁の下の力持ちとして事務長を支援したり、

他部署との共同を進めたりで、力をつけてきた例があった。

Cグループ:数字は経営状態を示すので、この数字を扱っている医事課が経営状態を公開することが出来る。

施設基準の確保のためには医事課が院内をラウンドして医療体制を確認することが有益である。

Dグループ:国の施策を自院なりに「翻訳」して院内に伝達するのも、医事課の大切な仕事である。

Eグループ:医事課はデータを持っているので、これを院内会議に提出して仲間と共有し、

仲間を啓蒙し、地域連携先とも共有することが求められる。

 

グループワーク、初対面同士とは思えない!

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6)全体の感想(自由発言)

★「医療行為→ㇾセ請求→資金入金」の流れも大切だが、これを逆行させる形で院内のコミュニケーションを深めることも重要だ。

★患者住所を分析すれば近くなのに患者さんが来ていない地域も明確になるので、看板などで広報することも検討してみたい。

★現場の声だけではやりにくいので、組織の促進のためには数字を合わせたバランス感覚を持つことが望まれる。

★医事課職員は医療ライセンスを持っていないことが多いが、だからこそ出来る仕事があるだろう。

★同じ医事課職員の仲間との話し合いが貴重な体験となった。

★今日の研究会を通じて、医事課の仕事が大切で素晴らしいものであることが分かった(複数の発言)

3.受講者の感想

★次回、同様のテーマで特研を実施する時は、是非、医事の最前線で働いているスタッフを

連れて来たいと思います.(管理職)

★大変勉強になりました。今後も現場に入りコメディカル部門とのコミュニケーションを

取ろうと思います。(医療系事務職)

★医事課の位置付けを再確認しました。自分たちがやっている事、新しくやりたい事、

持ち帰って続けていきたいです。(医療系事務職)

★色々な所から集まられていたので、病院によっての違いなどをたくさん聞けてよかったと思います.(医療系事務職)

★グループ別のディスカッションがとても参考になり勉強になりました(医療系事務職)

★同業の方とのグループワークは大変有意義でした (医療系事務職)

★医事課というチャンネルは地味な場ですが、あらためて大変な仕事だと思いました (管理職)

★医事課の方の御意見を聞くことで、新たな視点を得ることができました.(薬剤師)

★今回のようなテーマはまた開催してもらいたいです.(医療系事務職)

 

4.情報交換会でのあらまし(1630からの会食での発言の一部。適宜発題者から回答をした)

 

★頑張るだけではなく、計数の裏付けを持つことも大切と感じた。

★レセプト請求の方法などがわからないときに、どのように調査したらよいか迷うことがある

➡発題者のコメント:遠慮しないで行政などに質問してください、但し関東甲信越局などへは、慎重にしたほうがよい。

OTとして、医事課の仕事を理解できて勉強になった。

★医事課長を外部から招へいしたがうまく定着しなかった

➡他の受講者からのコメント:従来からの職員との兼ね合いが難しい。

★介護事業のレセプトと医療事業のレセプトは違う。セクショナリズムもあるので、これからもどうしたらよいかを追求していきたい。

 

5.個人の感想

★一方的な解説だけではなく、発題・質疑応答・グループワークと、バランスのとれた研究会が実現できたことは、

当会らしさを実現できたものと感じられる。

★発題者の穏やかで真摯な姿勢は受講者にも好意を持って受け止められ、

これが受講者の積極的な姿勢に結び付いたと思われる。

★医事課がレセプト処理を超えて大きく活躍することを願っての開催であったが、受講者の感想を見ると

その願いは実現できたと考えられる。受講者の皆様の新たな第一歩として、さらなる活躍を祈るばかりである。

 (報告者・鈴木喜六)

 

 

 

 

 

実践する会 マンスリーレポート

第418回例会

一括関連法の進捗と着地点……2018年に向けた道標

発題者:文部科学省高等教育局 医学教育課 企画官  佐々木 昌弘

これからの福祉と医療を実践する会 マンスリーレポート(仮称)20172(試作第1)

「一括関連法の進捗と着地点……2018年に向けた道標」受講リポート

このリポートは、研究会欠席の皆様に研究会の模様をお伝えするために発信されるもので、毎月の発信を目指して試行を続けます。

研究会での受講者の熱意は十分には伝えきれませんので、次回はどうぞご一緒にご参加ください。

皆様の活用の便宜のために、あえてシンプルなワード形式でお届けいたします。

ご意見などは、伊藤事務局長までお届けください。

 

      第418回 月例研究会

「一括関連法の進捗と着地点……2018年に向けた道標」受講レポート

 

1.研究会のあらまし

演 題  「一括関連法の進捗と着地点……2018年に向けた道標

これからの医療はどこに向かうのか(介護は?)

発題者  文部科学省高等教育局 医学教育課 企画官   佐々木 昌弘 氏

(前厚生労働省医政局 地域医療計画開始確保等地域医療対策室 在宅医療推進室室長)

進行係  天野社中 代表   天野 武城(当会副理事長)

日 時  2017年2月17日(金) 14:00〜16:30

会 場  東京都新宿区 戸山サンライズ

 

2.発題のあらましと報告者が注目した項目

★現在の担当は、栄養士以外の医療職・介護職の教育と医科大学の経営指導だが、医師だけの教育だけでは

完結するものではないと考えて来ている。これを踏まえて本日の発題を進める。

★歴史はゆっくりと変わるが、近代日本には二つの例外があった。一つは明治維新で、この時の主眼は

中央集権国家の構築だった。その後、終戦時には地方分権を進め、この流れが現在までつながっている。

これを踏まえて、現在の社会保障制度の論点と医療制度改革のポイント、加えて介護制度と医療制度の連関を述べる。

★医療法(昭和23)の改正の主な論点を要約すると、最低限の基準設定から、医療資源の適正配分(適材適所)

シフトしていることがわかる。衛生ルール・量的調整の役割・受診の流れと役割分担を経て、

社会保障と税の一体改革へとつながっている。

 

★自戒としては、2040年に向けて検討すべき時が来ていること、家族論の変化を織り込むべき時代であること、がある。

★過去の制度改革の流れを踏まえて地域包括システムについて述べれば、「地域の実情に応じて」の文言追加があった。

これは、戦後70年間の地方分権推進の結果であり、地方での自主的対応が必要となることを示している。

★病院同士の話し合いを行政が後押している。

病床機能報告制度は、「他院は何をやっているのか、当院は何をすべきか」を考える基本データとなる。

これまでは、「大半の病院は漠然と医療をやるだけ、運営はあっても経営はない」といわれていたが、

「何をやるか」という経営の本格的な考え方を促すために有効なツールである。

地域医療構想を見れば、病院の改築時期を迎えて地域に必要な病床数見極めが必要となる。

従来はこの見極めは不要だったが、今後必要となるこの見極めのために地域医療構想は有効である。

地域医療構想における調整会議の場は、自分の立ち位置を認識するために有効となる。

協議をしても簡単に結論が出るものではないことは当然だが、協議の結論だけではなく話し合いの過程が有効となる。

★このように地域医療構想は有効だが、相手への信頼が確立されていなければ協議の場だけでは効果が期待できないので、

その対応策として地域医療連携推進法人(以下、連携法人)を考えた。この連携法人は他の要素とも絡んで偶然に出てきた、

複数の役割を期待された制度といえる。ここでは「全国のおいしいどころ取り」ではなく、地域密着型を前提とした。

★連携法人についての意見として「厚生労働省は、連携法人を本気で推進したいのか」があるが、

地域医療構想実現のために有益なツールの一つであり、地域によってはフィットするだろうと考えている。

★連携法人についてのもう一つの意見として「連携法人の計画は、絵に描いた餅ではないのか」があるが、

餅が嫌いな人は参加しなければよい、餅が好きな人は行動すればよいと思う。

★介護保険法改正のポイントを、資料を活用して説明する。「介護医療院(報告者は初耳でした)」、

「わが事・丸ごと(これも初耳でした)」の地域つくり・包括的な支援体制の整備が中心となる。

 

3.質疑応答のあらまし

★質問:連携法人の想定する地域の大きさはどうなるのか、地域密着型というが2次医療圏を想定すると、

都道府県を超えては無理なのか。

回答:2次医療圏が基本だが、住民生活が密着していれば都道府県を超えて認められる可能性があると、

施行規則に定めてある。

★質問:連携法人に数病院を持つ法人が参加した場合の、地域性はどうなるか。

回答:複数病院を持つ法人としては日赤・済生会が典型だが、連携法人への参加は法人ではなく病院単位なので、

地域内の病院だけが参加することとなる。

 

4.情報交換会でのあらまし

(話題が未整理のままでしたので、適宜調整しました)

★「地域」の意味、重さを痛感した。またその意味が、地域提供体制(2次医療圏)・地域包括ケアシステム

(住み慣れた地域・中学校区)・連携法人(住民生活に密着)などで異なるので注意が必要だろう。

★新設の介護医療「院」の名称が、介護医療「施設」とならなかった理由の一つは、

当事者が「施設長よりも院長」を望んだため、と言われている。

★今日の課題を踏まえて、20184月の「惑星直列」(制度改革が集中する時期)に向けて

多くの課題が出現するので、当会としても真剣に取り組みたい。

★追加の研究会テーマ案として、医療介護施設での障碍者の活用策、働き方改革の医療介護版などが考えられる。

 

5.受講者の感想

★とてもわかりやすい、いい話が聴けてよかったです.(管理職)

★体系も今後の対策も、よく理解出来ました(コンサルタント)

 

6.個人の感想

★今回の研究会の狙いは「ここ数年で日本の根幹たる社会保障制度の大改革が始まっている。

これらをきちんと読み解き」することであったが、まさにそのために有益な内容であった。

重点と考える項目は立場によって異なるだろうが、相互の関係が深いことも理解できた点では

自信を持つことができた研究会であった。

★情報交換会の、話題の広さと展開の早さは相変わらずで、文章にまとめきれないとの実感が強かったが、

これはやむを得ないか。

★個人的な話だが、知人(男性、80)が今春から人工透析を受ける見込みで家族が不安だらけで落ち込んでいる。

そこで情報交換会に同席した会員のA氏に伺うと、透析を受けていても国内だけではなく、

先進国ならば外国旅行も可能と聞いて、早速知人に話してあげようと思った。

ちなみに、日本は腎移植が進んでいないことの反映として、人工透析は国際的に高水準なのだそうです、

勉強になりました。Aさん、ありがとうございました。

(報告者・鈴木喜六)